どうも、Webマーケター兼中小企業診断士のトーマツです。
中小企業診断士の仕事は多種多様ですが、顧問として事業者支援にあたることを目標としている人も多いのではないでしょうか?
実際、私が主催するマーケティング研究会でも「顧問契約を取るにはどうすれば良いのか?」「顧問契約に至るまでどんな流れがあるのか?」といったご質問をいただくことが多いです。
その一方、ネットには顧問業務を獲得するまでの具体情報が転がっておりません。
そこで本記事では2024年1月時点で顧問契約を13社(2023年10月時点)保有する私トーマツが、事業者様から「相談が発生するタイミングからマーケティング顧問獲得・実行フェーズに至るまでの流れや各ステップで取るべきアクション」について解説したいと思います。
あくまでも私見100%で書き上げたものですが参考になる部分も多いと思います。
マーケティング顧問業務獲得を目指している人はぜひ最後まで読んでください。
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前編では「①相談発生から③事前調査」、中編では「④ヒアリングから⑤顧客類型の整理」までの流れについて解説しました。
前編・中編が気になる方はこちらからどうぞ↓
- 診断士としてマーケティング顧問契約をとっていきたい人
⑥課題整理・提案内容の整理
顧客類型の整理が完了したら次は「課題整理・提案内容の整理」です。
ここで大事なことは100点の課題・提案を作ることではありません。
それよりも大事なことは、これまでの情報収集で得られた材料をもとに仮説を交えながら「ある程度ゆるい根拠に基づく最もらしい課題・提案」を用意することです。
というのも、数時間のデスクトップ調査と一度のヒアリングで相談先の課題を特定できればこんな苦労のないことはありません。
マーケティングにおける勝ち筋を見極めるにはより深いレベルの顧客理解、競合理解、自社理解が必要です。この点は念頭に置いておいていただければと思います。
一方で、相談先から相談を受けている立場としては話を前に進めるためにも、何かしらの提案が必要をまとめる必要があります。
顧客類型を用いて刺さりやすい提案を導く
そこで活用できるのが前のステップでまとめた顧客類型を使う方法です。
大雑把ではあるものの、相談者を顧客類型に当てはめ込むことによって、どんな提案が「刺さる可能性が高いか?」の当たりをつけることができます。
そして顧客類型に基づき提案をまとめていくことによって「ある程度ゆるい根拠に基づく」という要件を満たすことができます(根拠のない話を好む経営者はいません)。
ここでは各顧客類型に対して、どのような提案が「刺さりやすいか?」について2つ例を説明させていただきます。
1T-Mの場合
まずは1T-Mから見ていきましょう。
- 利益設計による分類
→ デジマに取り組んでいない - デジマ取り組み状況による分類
→ 1件あたりの粗利 > 推定CAC - ファンダメンタルネック/テクニカルネックによる分類
→ テクニカルネック
この事業者の場合、私なら以下の通り課題・提案を整理します。
[現状]
- ファンダメンタルネックではないので、魅力的な商品・サービスを持っている
- 1オーダーあたりの粗利が推定CACを超えている
- デジマに取り組んでおらず、チャネルが限定的
[目標・課題]
- テクニカルネックの解消による売上・利益増
- HP等のデジタル媒体上の受け皿を作りチャネル拡大に着手する
[提案内容]
- HPやLP等のデジタル媒体上の受け皿を作り、集客手段としてリスティング・Meta広告を活用した場合の収支を推定する
- 利益創出の算段がつくようであれば簡易なHPやLPを立て、少額の広告予算でテストマーケティングを行う
- テストマーケティングが成功した場合は、本運用に移る
- 収穫低減の法則により広告の費用対効果は下がっていくため、利益確保できるラインまで予算を増やす → 飽和したタイミングで別のチャネル開拓に着手
*次のステップに進めなくなったタイミングで、戦略を練り直す
かなり大雑把なまとめかたをしておりますが、話を前に進めるに耐えうる内容にはなっているのではないでしょうか?
2T-Mの場合
もう一つ見てみましょう。次は2T-Mです。
- 利益設計による分類
→ HPはあるものの問い合わせは発生していない - デジマ取り組み状況による分類
→ 1件あたりの粗利 > 推定CAC - ファンダメンタルネック/テクニカルネックによる分類
→ テクニカルネック
もちろん、業種やサービスにもよりますが、2T-Mに分類される事業者であれば、私なら以下を軸に提案を組み立てます。
[現状]
- ファンダメンタルネックではないので、魅力的な商品・サービスを持っている
- 1オーダーあたりの粗利が推定CACを超えている
- HPは持っているものの、これまで問い合わせ(コンバージョン)が発生していないことを考えると機能していない可能性が高い。
- そもそもHPへのアクセス数が少ないのか(アクセスボトルネック)、アクセスは一定数あるものの(例:月間セッション数1,000以上)顧客ニーズと発信情報がズレているが故にコンバージョンが発生していない状況なのかがわからない(コンバージョンボトルネック)
[目標・課題]
- テクニカルネックの解消による売上・利益増
- アクセスボトルネックなのか?コンバージョンボトルネックなのか?の分析を通じて最適戦略を定める
[提案内容]
- アクセス解析を通じてコンバージョンが発生していない理由を特定する
- アクセスボトルネックの場合、集客手段としてリスティング・Meta広告を活用した場合の収支を推定する → 以降は1T-Mのステップ③以降と同じ
- コンバージョンボトルネックの場合は、顧客ニーズや競合との競争環境を踏まえた訴求内容を検討の上、HPの情報構成を修正し、集客手段としてリスティング・Meta広告を活用した場合の収支を推定する → 以降は1T-Mのステップ③以降と同じ
*次のステップに進めなくなったタイミングで、戦略を練り直す
こんな感じです。
このような形で各顧客類型に対してどのような提案をまとめるか?の大雑把なフレームを用意しておけば、コンサルティングの質と効率が激増しします。
他の顧客類型に対する提案の型も紹介したいところですが、長くなり過ぎてしまうのでここで止めておきます。
知りたいという方はぜひ私が主催するデジタルマーケティングラボ(DML)を覗いてみてください。
⑦信頼の獲得
当たりがついたら次は「提案のための面談」、、、と言いたいところですが、その前に確認しておくべきことがあります。
それは「相談先に有償の提案を受け入れる素地があるのかどうか?」です。
これを見極めるには相談先に対して「コンサルタントであるあなた自身」の信頼が十分積み上がっているかどうか?を把握しておく必要があります。
と言うのも我々が扱っているコンサルティングサービスは信頼財であり、相談先からの信頼が獲得できていない段階で契約に至ることはほとんど不可能だからです(信頼財の説明は別の記事で書こうと思います)。
信頼を得るとはどういうことか?
顧問契約を獲得するには、相談先から「〇〇さんに相談すれば物事が良い方向に進む」ことの実感を得てもらう必要があります。
これがいわゆる「信頼を獲得する」と言うことです。
そして相談先から「信頼」を獲得するには「信用」の積み重ねが重要です。
ちなみに「信頼」と「信用」は全く別物です。
- 「信頼」:信用や実績を源泉にして「この人に任せてみよう」と思っていただく原動力。未来に対する期待値。
- 「信用」:過去の業績や実績。クレジットカードの審査で行われる信用調査も過去の出来事に対して行うもの。
信用の積み上げ方
では信用を積み上げるには何をすれば良いのでしょうか?
それは、相談先の課題を理解し、課題解決につながる有益情報を提供しまくることです。
例えば私の場合、まだ実績も実力も不十分だった時、どうしても支援したいと思っていた企業様に下記を手弁当で実施したことがあります。
おそらく30時間以上は無償で手を動かしたと思っております。
- 有益情報の提供(1日ひとつ小ネタを提供)
- 現状のデジタルマーケティング施策の効果分析 (アクセス解析ツールの実装なども行った)
- 新たな顧客仮説の立案
- 競合分析(商材理解、デジマ施策の分析、など)
- アクションプランの策定(失敗した場合の代替案含む)
今では相談者の悩みに対して瞬時に説得力の高い解決策を提示できるようになったので上記のような提案は行っていませんが、実績がない段階で損得勘定を働かせるのは勿体無いで翔。
もしその相談先からの受注がどうしても欲しい場合は、ご自身が許す範囲で信用積み上げのアクションを取ってみてるのも良いと思います。
このような行動を続けていけば、返報性の原理が働き、相談先から自ずと「顧問になってほしい」「有償でコンサルを受けたいから提案してくれない?」といったわかりやすいシグナルが出てくるでしょう。
初心者の方の場合は、上記のような分かりやすいシグナルが出るまで信用を積み上げる経験をしてみても良いかもしれません。
信用を下げる行動
なお、積み上げていった信用も、以下の行動で帳消しになってしまいます。
コンサルタントであれば、コンサルとしてのアドバイスの質で勝負したい気持ちはあるかと思いますが、以下の行動を取っているようであれば、アドバイスの質が評価されることはありません。
特に支援先に「あの件どうなった?」と督促されるのは最悪です。支援先を督促する側になりましょう。案件に携わる際にはお気をつけください。
一発で信頼が帳消しになってしまう行為
- レスが遅い、スピード感がない(「あれどうなった?」と言わせる)
- こまめな連絡がない
- 時間を守らない
- 根拠のない提案
- 情報を十分に調べていない
- やると言ったことをやり切らない
- 社会倫理、コンプラに反する言動
⑧提案面談
いよいよ最終ステップの提案面談です。
提案面談時には正式なプロポーザル資料を用意した方が良いでしょう。
提案内容が100%テイクされることはもちろん嬉しいことですが、そのような状況は想定せず、提案面談はあくまでもディスカッションが目的であることを念頭に置いておきましょう(ここで契約合意に至れなかったとしても、以降のすり合わせで巻き返すことが可能なよう、バッドシナリオを想定しておくことが重要です)。
提案資料の構成は?
では提案資料の構成はどのようにすれば良いでしょうか?
コンサルとしての色が出るところですので、もちろんフォーマットは自由ですが、ここでは私の型を紹介できればと思います。
- ご提案のサマリー
- 課題
- 本提案の役務範囲(スコープ)
- 具体的なアクション内容
- スケジュール
- 体制(相談先組織も含む)
- 役割分担
- お見積もり
- 想定問答
- Appendix(その他必要な資料)
私はプロポーザル資料のテンプレートを用意しており、ほとんどの案件において多少のカスタマイズで済むような体制を構築しております(こんな感じ↓)
こちらのパワーポイントは有償販売しております(¥3,000円 → 今だけ¥1,000)。
マーケティングコンサルタントを目指している方はぜひ以下よりダウンロードしてください。
マーケ&セールス強化の全体像を見せる
また、マーケティング&セールス強化の取り組みは畑を耕す感覚に似ています。
最終目標に到達するには多くの労力・お金がかかります。
つまり、全ての内容に短期で取り組める訳ではないので、まずは事業目標と費用対効果を考慮して、フォーカスすべきチャネルを選定しなければなりません。
その一方で、支援先側にゴールをイメージして頂くことも重要です。そのためにもマーケティングの全体像をお見せておくことは重要でしょう。
以下は私が実際に支援先の提案時に使ったディスカッションペーパーです。
必要に応じてこちらのような全体像を見せることにも取り組んでみてください。
提案面談を経て、お互い合意できれば、無事に顧問契約締結です!
まとめ
以上、本記事では「相談が発生するタイミングからマーケティング顧問獲得・実行フェーズに至るまでの流れや各ステップで取るべきアクション」について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
もし本記事の内容でご質問ある方は是非コメント欄に書き込んで頂けると幸いです。
お答えできる範囲で答えさせて頂きます。
それではまた!