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探索財・経験財・信頼財を理解し「独りよがりマーケティング」から脱却!【現役診断士の解説】(1/2)

どうも、Webマーケター兼中小企業診断士のトーマツです。

ありがたいことにこれまでに50社以上の中小企業様のマーケティングを支援させていただく機会がありました。

この中で日々感じることは事業者都合の独りよがりなマーケティングが展開されている様子が散見され、それゆえに売上に苦戦されている企業が多いことです(マーケティングと呼んでよいのかすら疑問?)。

理由はたくさんありますが、ひとことで言うと顧客が求めているマーケティングメッセージが伝えられていないことに尽きます。

そしてその理由の一つとして「自社商品・サービスが顧客からどのように評価されているか?」を理解していないことが挙げられます

これを解消するヒントに活用できるのが、『探索財』・『経験財』・『信頼財』という商品・サービスの分類を理解し、自社のマーケティングに活かすことです。

本記事では、探索財・経験財・信頼財とは何か?」「これらをどのように自社マーケティングに活かすべきか?について解説したいと思います。

探索財・経験財・信用財とは?

まずはざっくり、探索財・経験財・信用財とは何か?について解説します。

これらの言葉は商品やサービスの品質を評価する際の特性に基づいて分類された概念で、マーケティングや消費者行動の研究でよく用いられます。

教科書的な説明をすると以下の通りです。

  • 探索財
    消費者が購入前に容易に品質を評価できる商品やサービス。
    (例:家電製品や衣服など)
  • 経験財
    消費者が購入して使用した後で初めて品質を評価できる商品やサービス。
    (例:レストランの料理やコンサートなど)
  • 信頼財
    消費者が購入後も品質を完全に評価するのが難しい商品やサービス
    (例:医療サービスや法的サービスなど)

顧客の知識や経験頻度による分類とも言い換えられるでしょう。

「探索財・経験財・信用財」の歴史

ちょっと回り道になりますが、これらの概念が誕生した歴史について触れさせてください(興味ない人は下にスキップ↓↓↓)

ときは1970年、Binghamton大学のPhilip Nelson教授は消費者行動と情報の関係性を分析する際の枠組みとして「探索財(search goods)」と「経験財(experienced goods)」という考え方を提唱しました。

Binghamton大学のキャンパス。綺麗ですね〜 ← 語彙(出典:海外留学推進協会

教授は、探索財を顧客が商品・サービスを購入する前に情報探索が完了し、その価値判断が完了しているもの、経験財を事前の情報探索が不適切であり、先に購入し後付け的に評価する方が望ましいものと分類しました。

顧客視点で情報探索にどの程度コストがかかるのか?に着目したわけですね。

この考え方を応用すれば、経験財を売るには購買コストを低く抑え、情報探索コストを下回らせれば良いことがわかります。

また1973年にこれらの分類に加え、DarbyとKarniが価値はあるのに通常の消費では消費者に評価・価値が認知できない財があるとし、これらを信頼財と名付けております。

外科手術では術後に医者からのフィードバックが得られますが、素人である消費者は医者の言うことをそのまま鵜呑みにするしかありません。

私のような素人は手術の成否を判断する能力がないため、
「だったら、信頼できる人にお願いしたいよね」という心理になるわけです。

つまり、消費者は購買行動に対して相応のリスクを背負っており、価格情報以外にも自分自身がその商品・サービスを信頼できるか?という軸が大事になってきます。

73年に「信頼財」という括りが加わり、以降、マーケティングの世界で消費者行動分析の軸として活用されてきました。

なんでこんな分類が必要?

ではなぜ、このような概念が必要なのでしょうか?

それは、自社の提供する商品やサービスがどのカテゴリに分類されるのかを把握していなければ、最適なマーケティング戦略はおろか、ターゲットに対して不適切なコミュニケーションを取ってしまうからです。

以降では、それぞれの事例とマーケティングにおけるポイントについて解説したいと思います。

探索財の事例とマーケティングのポイント

繰り返しになりますが、探索財は、消費者が事前に品質を評価できる商品やサービスのことを指します。

これらの商品は、消費者が店頭で直接商品を見て触って確認することができるため、言うなれば「見ればわかる」商品です。

情報探索コストが低い財とも言えますね。

1970年と比べて情報収集コストが著しく低下した現代において、当時は経験財とされてきたものが現在は探索財になっていたり、分類はダイナミックに変わるものとご理解いただければと思います。

探索財の例

探索財の典型的な例は以下の通りです。

  • PC
  • 電化製品
  • 家具
  • 衣服
  • 自動車

探索財のマーケティングのポイント

探索財のマーケティングのポイントは「顧客による情報探索コストが低いこと」をしっかり理解することです。

つまり探索財をうまくマーケティングするには顧客が自社商品・サービスに求める品質要素を把握し、その情報提供を徹底的に行うことです。

平たく言えば、顧客が知りたがっている情報をそのまま提供することです。

例えば、PCを選んでいる顧客は「価格」「見た目」「CPU」「ハードディスク容量」など、あらゆる軸で商品を評価します。

これらのスペックに圧倒的な自信がある場合は、他社製品との比較を通じて、自社製品の優位性を強調することでうまく売り捌くことが可能になります。

星野リゾートは5つの軸で自社の優位性を検討している。私もクライアント様によくこの話をさせていただいております。(出典:【星野リゾートに学ぶ②】マーケティング戦略とDX戦略

逆にスペックに自信が持てない場合は、製品スペックで勝負するのではなく、「体験価値」「購入しやすさ」などの顧客体験においての付加価値を強調するマーケティングが効果的な打ち手となるでしょう。

言い換えると、顧客体験に照らしたマーケティング施策が効果的ではない場合には、製品スペックを見直す(再開発)こと以外に打ち手がなくなってしまいます。

この見極めを誤ってしまうと事業に多大なダメージを与えてしまうため、注意が必要でしょう。

次回に続く(「経験財の事例とマーケティングのポイント」から)

次回は「経験財の事例とマーケティングのポイント」からです!

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