どうも、Webマーケター兼中小企業診断士のトーマツです。
先日、デザイナーの方に業務を依頼した際に「源泉徴収が必要では?」と言われたのですが、これって本当に源泉徴収する必要あるのでしょうか?
また、中小企業診断士として業務を受ける場合、委託先から受け取る報酬は源泉徴収対象になるのでしょうか?
このような疑問を持ったことはありませんでしょうか?
私自身、中小企業診断士を取得後、様々な方々とお取引させて頂く機会がございますが、源泉徴収ってややこしいもので、たびたび混乱しておりました。
そこで本記事では、中小企業診断士として「業務の発注者または受注者となる際に気をつけたい源泉徴収の4つのポイント」について解説させて頂きます。
- 独立・副業を考えている中小企業診断士の方
そもそも源泉徴収とは?
会社員の方がもらう給料や個人事業主が商売で稼いだお金には、必要経費を差し引いた残りの金額(所得)に対して、所得税が課せられます。
感覚的に所得税は、所得を得る人が支払うべきものと考えてしまいますが、特定の所得については所得を得る側ではなく「報酬を支払う法人や個人が代わりに納税する」ことがあります。
この仕組みのことを「源泉徴収制度」と言い、代わりに納税する法人・個人のことを「源泉徴収義務者」と呼びます。
源泉徴収の対象となる所得については、源泉徴収義務者が「所得税分を差し引いた金額を天引きして、所得を得る人の代わりに国税庁に納付している」わけです。
会社員の方であればあまり意識することが少ないかもしれませんが、給料を支払ってもらう際に会社側があらかじめ所得税分を天引きしているわけですね。
源泉徴収が必要となる報酬・取引
会社が社員に対して支払う給料はもちろんですが、源泉徴収義務者が以下のような取引を個人・法人と行う場合、その報酬は源泉徴収対象となります。
- 原稿料や講演に対する報酬(5万円以下であれば免除)
- 弁護士・公認会計士・司法書士などの特定の資格を持つ人に対する報酬
- プロ野球選手やプロサッカー選手、モデルや外交員等に支払う報酬
- 企業診断員の業務に関する報酬
上記はあくまで一例ですが、源泉徴収の対象となる取引は所得税法第204条に列挙されておりますので気になる方は覗いてみて下さい。
なお、下線を引いた「企業診断員の業務に関する報酬」は以下のように定義されており、対象となる報酬に対して10.21%が所得税として源泉徴収されます(1回の支払いが100万円を超える場合は20.42%)。
- 中小企業診断士の業務に関する報酬・料金
- 企業の求めに応じてその企業の状況について調査及び診断を行い、又は企業経営の改善及び向上のための指導を行う人(経営士、経営コンサルタント、労務管理士等と称されるもの)のその業務に関する報酬・料金
つまり、あなたが中小企業診断士であろうが、そうでなかろうが「企業の求めに応じて経営改善および向上のための指導(つまり経営コンサルティング)」を行った場合、その対価は源泉徴収の対象となります。
ただし、上記の定義に該当しない「経営以外」のコンサルティング料は「源泉徴収の対象外」となります。
ここの判断はグレーとなりますが、ご自身が企業向けにコンサルティングを実施する際には、「企業の状況について調査及び診断を行い、又は企業経営の改善及び向上のための指導を行う」に該当するかどうかを判断する必要があります。
誰が源泉徴収義務者の対象者となるの?
基準は以下の通り簡単です。
- 法人(厳密にいえば個人への報酬を伴わない法人は対象外)
- 3人以上の従業員を雇っている個人事業主
つまり、個人事業主の方でも「常時2人以下の家事使用人のみ雇用している場合」は源泉徴収が不要となります。
また、源泉徴収義務のない個人事業主は、例え源泉徴収の対象となる報酬・料金を支払う場合においても源泉徴収は必要ありません。
中小企業診断士として「報酬を支払う」際に気をつけたいポイント
中小企業診断士として「報酬を支払う」立場になる際に気をつけたいポイントは下記の通りです。
- ご自身が源泉徴収義務者に該当するのかどうか?
- 依頼先への取引が源泉徴収対象となるかどうか?
①ご自身が源泉徴収義務者に該当するのかどうか?
まずはご自身が「源泉徴収義務者」であるかどうかを判断しましょう。
例えば、診断士を取得後、週末起業を目的に個人事業主登録をしたのみで、従業員を雇用していない方の場合は「源泉徴収義務の対象外」となります。
例え所得税法第204条に列挙されている源泉徴収対象となる報酬であったとしても(例えばデザイナーへのデザインに対する報酬)、源泉徴収義務のない方からの支払いでは源泉徴収は不要となります。
一方、「3人以上の従業員を雇用している個人」または「社長を含め個人に対して給与を支払っている法人」の場合は源泉徴収義務があります。
筆者は個人事業主ですが従業員を雇用しておりませんので、源泉徴収義務はありません。
②依頼先への取引が源泉徴収対象となるかどうか?
源泉徴収義務の対象となる場合は、依頼先への発注内容が所得税法第204条に記載されている取引に該当するかどうかを確認しましょう。
源泉徴収対象となる報酬であるにも関わらず、それを見過ごしてしまい源泉徴収漏れがあった場合は、国税庁から延滞税などのペナルティが課せられてしまう可能性があります。
このペナルティは当然、源泉徴収義務者に課せられます。
親切な取引先であれば請求書のやりとりの際に指摘してくれるかもしれませんが、そうでないケースの方が大半かと思いますので是非気をつけて下さい。
中小企業診断士として「報酬を受け取る」際に気をつけたいポイント
中小企業診断士として「報酬を受け取る」立場になる際に気をつけたいポイントは下記の通りです。
- 源泉徴収となる取引であるかどうか?
- 確定申告で払いすぎた源泉所得税を還付してもらう
①源泉徴収となる取引であるかどうか?
まずは発注者から受けた業務が源泉徴収の対象となるかどうかを確認しましょう。
中小企業診断士として業務を受ける際に争点となるのは、その業務が「企業の求めに応じてその企業の状況について調査及び診断を行い、又は企業経営の改善及び向上のための指導を行う(つまり経営コンサルティング)」に該当するか否かでしょう。
上記に該当しない「経営以外」のコンサルティングであるにも関わらず源泉徴収されてしまった場合は、必要以上の所得税額を納付することになります。
誤って源泉徴収されたものは誤納額還付請求により返ってきますが、めんどうな事務処理を増やしてしまいますので、発注者に指摘しましょう。
②確定申告で払いすぎた源泉所得税を還付してもらう
報酬を受ける側の視点では、源泉徴収とは必要以上の所得税を前払いすることです。
必要以上に支払った分は確定申告時に還付して頂く必要があります。
確定申告の際に迷わないようしっかり事業主賃または仮払税金などの科目で仕訳しておきましょう。
まとめ
以上、本記事では「業務の発注者または受注者となる際に気をつけたい源泉徴収のポイント」について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
もし本記事の内容でご質問ある方は是非コメント欄に書き込んで頂けると幸いです。
お答えできる範囲で答えさせて頂きます。
それではまた!
管理部門の社員が退職し、その引継ぎの一環として業務委託契約で業務をサポートして頂く場合は( 月5-10万円、1年程度を想定)、「経営改善および向上のための指導」等コンサルではないので、源泉徴収は必要ないと言う風に受け取りました。