どうも、Webマーケター兼中小企業診断士のトーマツです。
「デジタルマーケティングで集客したいんだけど、、、」
中小企業診断士として活動していると、上記のようなご相談を頂く機会が多いと思います。
皆様はこのような相談を受けた時は、どのように対応されているでしょうか?
正解・不正解はもちろんありませんが、本記事では私の対応方法について解説しようと思います。
診断士やマーケティングコンサルタントを目指している方、または成り立ての方にとっては参考になる部分も多いと思います。
ぜひ最後まで読んでくださいね!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
前編では「本当にデジタルマーケティングで良いのか?を見極める方法」、中編では「リスティング広告の活用是非」を見極め方」ついて解説しました。
前編・中編が気になる方はこちらからどうぞ↓
- 診断士、マーケティングコンサルタントになりたての方
- 診断士、マーケティングコンサルタントを目指している方
テストマーケティングの提案方法
前回までに「LTV起点CPA」 > 「シミュレーション起点CPA」であることの確認を通じて、「リスティング広告の実行是非を判断する方法」について説明しました。
ここまで来れば、リスティングを通してデジタルマーケティングによるクイックウィンが得られる可能性が高まって参りました。
一方で、本当にリスティング広告の有効かどうかを判断するには「実際に試してみるしかありません」。
つまり、少額の予算を投じてリスティング広告の有効性を検証するための「テストマーケティング」を実行するのが次の打ち手となります。
しかし、「テストマーケティングを実施しましょう」と提案してピンとくる相談者は残念ながら多くはありません
そこで本記事では、「テストマーケティングを実行すべき理由」と「相談者に対してテストマーケティングの実行を提案する際に気をつけるべきポイント」を解説したいと思います。
テストマーケティングを実行すべき理由
そもそもテストマーケティングはなぜ必要なのでしょうか?
理由は簡単なようで難しいです。
いろいろな説明方法があると思いますが、ここでは私が考えるテストマーケティングの意義について説明したいと思います。
「成果が出るのが自明」であればテストは不要
まず第一に言えることは「リスティング広告を打って成果が出るのが自明」であればテストマーケティングは不要ということです。
つまり、どういう事かと言うと「多くの事業者の場合、リスティング広告を打っても成果が確約されていない」ということです。
それもそのはず、LTV起点CPA(顧客獲得単価)で試算した値には多くの推測値が含まれておりました。
[中編で説明した推測値]
- 平均継続期間 = 33ヶ月
- リード獲得後受注率 = 20%
- 営業人件費 = 3万円
- コンバージョン率 = 1%
リスティング広告の有効性は、上記の推測値が最もらしいことが検証されて初めて判断されるべきものです。
ただし、これらの数字はシミュレーションできるものではなく、案件を動かしてみて初めて見えてくる値となります。
つまり、「リスティングを打てば必ず儲かりますよ」というセールストークを展開してくるコンサルタントや広告代理店を信用してはならないと言うことです。
リード獲得後受注率が半分になってしまったら
例えば、リスティング広告を実際に運用し、多くのリードが集まったとしましょう。
元々は商談数の20%が受注に至る想定でしたが、これが実際には営業体制の不備などで10%という結果が出たとしましょう。
この場合、LTV起点CPA(目標とすべきCPA)は元々の想定の6万円/件から3万円/件になってしまいます。
つまり、キーワードプランナーからシミュレーションしたCPAが4.5万円/件であり、修正後LTV起点CPAの3万円/件を上回ってしまいます。
この場合、あいにく、リスティング広告は有効でないと言う判断になってしまいます(平たく言うと広告を回せば回すほど赤字になる)。
いきなり本番に挑む = の無駄
上記の状況において、どのような意思決定を行うかは悩ましいです。
ある相談者は「営業体制の改善による受注率向上」→「目標CPA達成」→「利益創出」を掲げるかもしれませんし、他の意思決定者は「CPAが合わないんだったらやめよう」と言う判断を下すかもしれません。
相談者の長期目標を踏まえて、これらの判断をサポートするのもコンサルタントの仕事ですが、ここで申したかったことは、テストマーケティングをしていなければ「多くのリソース(特に資金)を無駄にしていた可能性が高かった」と言うことです。
受注率の実績値を得るのに100万円の広告予算と1人月のリソースしか必要でなかったのにも関わらず、テストマーケティングをスキップしてしまったが故に一気に1,000万円+5人月のリソースを溶かしてしまう状況もありえたと言うことです。
資金に余裕のある大手企業や投資家から短期で成果を求められているスタートアップであれば許容されるべき判断かもしれませんが、リソースネックの中小企業であれば絶対NGです。
テストの目的 = 本番に進むべき根拠を得ること
色々ごにょごにょ申し上げましたが、テストマーケティングの目的を私が一言で申すと「投じられるリソースの範囲内で、成果を上げるフェーズ(つまり本番)に挑むべき根拠(データ)を得ること」と説明します。
うん兆円という大きな金額が動く石油開発において、本当に石油が出るのか?を検証する「試掘」工程があるのとまったく同じです。
金額の規模は大幅に下がりますが、デジタルマーケティング分野においても「テストマーケティング」という工程は必須ですし、この感覚を相談者に理解いただくことが案件を成功に導く上で重要となります。
テストマーケティングを提案する際に気をつけるべきポイント
ここからは、相談者に対してテストマーケティングを提案する際に気をつけるべきポイントを解説します。
ポイントは以下の4点になります。
- テストマーケティングの目的のすり合わせ
- 目標(成果の判断基準)のすり合わせ
- 投下リソース・期限のすり合わせ
- 目標未達シナリオの仮説と対策の「事前」立案
一つずつ見ていきましょう。
①テストマーケティングの目的のすり合わせ
まずはじめにテストマーケティングの目的をすり合わせを行いましょう。
というのも目的次第で何をテストするべきか?が変わってくるからです。
例えば「リスティング広告のチャネルがそもそも有効かどうか?」を検証する目的も考えられますし、マーケティングフェーズ以降の「セールスフェーズの有効性(受注率など)」を検証する目的も考えられます。
また、細かな点で言うとリスティング広告の運用方法を複数パターン試し、最も成果に結び付けられそうなパターンを抽出すると言う目的も考えられます。
リスティング広告の運用パラメターで検証すべき項目
- コンバージョンポイント(問い合わせ、資料請求、セミナー予約、など)
- ランディングページ(FVデザイン、オファー、フォーム、など)
- 広告クリエイティブ(訴求文、オファー、など)
- ターゲット
少額といえどもテストマーケティングでは、リソース投下が発生します。
この目的意識がズレてしまうと、リソースの無駄遣いにつながってしまい相談者の信頼を失ってしまう可能性もありますので、ぜひ目的のすり合わせを行ってください。
②目標(成果の判断基準)のすり合わせ
次は目標(成果の判断基準)のすり合わせです。
目的と目標って同じじゃない?と思われるかもしれませんが、これらは全く違います。
目標とは「目的が達成されているか否かを判断するための定量的な指標」です。
目的が「リスティング広告のチャネルがそもそも有効かどうか?」を判断することであった場合、どの指標がどのくらいの数値基準を超えて達成されればチャネルの有効性が検証されているか?を議論しなければなりません。
例えば、コンバージョン(問い合わせ、資料請求、セミナー予約、など)の件数が目標であった場合「そもそもコンバージョンが発生するか?」「最低10件」といったように具体的な数字に落とし込まれるべきです。
また、何よりも重要になるのが、「目標が達成された暁には本番フェーズに移行すること」を合意しておくことです。
これを合意しておくことで、達成の場合は速やかに本番フェーズに移れますし、未達の場合は、テストマーケティングの結果を「次の達成に向けた課題抽出」に活用することが可能です。
③投下リソース・期限のすり合わせ
投下リソース・期限のすり合わせも重要です。
と言うのもなんとなくでテストマーケティングを始めてしまうと、「あれ、これっていつまでテスト続けるんだっけ?」といった具合に、効果検証フェーズがダラダラ続いてしまいかねないからです。
大企業の場合は、このような怠慢な遂行は許されませんが、中小企業の場合、経営者の性格によっては上記のような怠慢な遂行が決行されることがあります。
テストマーケティングに投下できるリソース(予算、人月)や期限は予め合意しておきましょう。
④目標未達シナリオの仮説と対策の「事前」立案
最後は目標未達シナリオの仮説と対策の「事前」立案です。
ん?どういうこと?と思われたかもしれませんが、このステップを行うことが個人的に一番大事と思っております。
前述の通り、テストマーケティングを行うということは「不確定要素があり、成果が約束されていない」状況であるといえます。
言い換えると、100%上手くいくと思って実行されるテストマーケティングは無いということです。
つまり、上手くいかない可能性があることを認識していたのにも関わらず、「実際に目標未達に陥った際の次の打ち手を用意していない」状況というのはコンサルとしての怠慢を表しております。
目標未達に陥った後、相談者を含めプロジェクトメンバーは失意のどん底に陥ってしまいます。
このような状況でコンサルも一緒になって肩を落としていたようでは3流以下のコンサルと言われても仕方がないでしょう。
そこで提案したいのが、テストマーケティングを実施する前に、テストが目標未達で終わるパターンを事前に洗っておき、その対策を立案し、相談者に事前説明しておくことです。
目的:リスティング広告の有効性検証
リソース:予算 = 100万円、4ヶ月
目標:顧客獲得単価(CAC) = 33万円/件の達成
「平均CPA = 60,000円/件」かつ「平均受注率 = 20%」の達成
- 未達シナリオ①:平均CPAが目標値の2倍
→リスティング広告の出稿設定の見直し
→ランディングページの見直し - 未達シナリオ②:平均受注率が目標値の半分
→営業遂行体制の見直し(勝ちパターン抽出→属人化排除) - 未達シナリオ③:XXX
→ XXX
上記はかなり漠とした例になっておりますが、未達シナリオもより具体的なものを用意しておくことで次の打ち手が明確になり、相談者の信頼をより強固なものにできるでしょう。
テストマーケティングを実行する場合にはぜひ上記をお試しください。
まとめ
以上、本記事では「「デジタルマーケティングで集客したいんだけど」と相談された際に最初にやるべきこと」について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
もし本記事の内容でご質問ある方は是非コメント欄に書き込んで頂けると幸いです。
お答えできる範囲で答えさせて頂きます。
それではまた!