どうも、Tomatsuです。
「プラント業界って今後どうなるの?」
「コロナの影響は?」
など、今後この業界がどうなるのか気になる就活生の方も多いのではないでしょうか?
本記事では、そのような方々向けにエンジ会社のイチ社員として
勝手に「プラント業界の今後」についてに語ろうと思います。
「そもそもプラントエンジニアリング業界がどんな業界なのかが分からない」という方はこちらの記事からお読みくださいね。
- エンジニアリング会社志望の学生
- 石油・ガス系のプラントエンジニアリング業界の今後が知りたい方
[Tomatsuについて]
エンジ会社勤務の30代男性です。
普段はプロセスエンジニアとして海外プラントオーナー向けに操業コンサルティングや新規事業開発を担当しております。
社員が語る!プラント業界の今後
プラントエンジニアリング会社の今後を語る上で、顧客である石油メジャーや各国の国営石油会社の事業環境を理解しておくことは非常に重要です。
そこで本記事では、
- 新型コロナウイルス
- 脱炭素化への対応
に対する顧客への影響を説明した上で、エンジニアリング会社がどのように変革を遂げていくべきかについて解説したいと思います。
今回は石油・ガス系の話に絞ります。
インフラ系(ごみ処理、水処理)の動向については別記事で取り上げる予定ですので予めご了承ください。
新型コロナウイルスの影響
世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっている中、石油・ガス産業への影響はどうなっているのでしょうか?
残念ながら、石油メジャーや各国の国営石油会社は、例にもれず新型コロナウイルスの影響を受け苦境に立たされております。
下記は石油メジャー4社の2020年第2四半期の最終決算結果です。
[石油メジャー2020年Q2業績(最終損益)]
- BP:168億ドル(赤字)
- Shell:181億ドル(赤字)
- ExxonMobil : 11億ドル(赤字)
- Chevron: 82億ドル(赤字)
めちゃくちゃひどいですね。。。
大手4社合計で約440億ドルの赤字を計上したことになります。
しかも「通年」ではなく「四半期」の結果で。。。
中長期的な石油想定価格の引き下げで「減損処理」を行ったことが理由ですので、キャッシュが減った訳ではありませんが、顧客が厳しい事業環境にあることは言うまでもありません。
大型プロジェクトの最終投資決定が延期
この厳しい環境を踏まえ、Shellなど石油メジャー6社は年初計画からおおよそ3兆3億円の予算圧縮に踏み切りました。
これによりExxonMobilがモザンビークLNGプロジェクトの最終投資決定の延期するなど、EPC役務を受注していた「日揮」への影響も大きく、今後の業界の不透明感を代表するニュースとなりました。
他にもBPが長期の新規プロジェクトを抑制し、Shellが米LNGプロジェクトから撤退するなど、石油需要の減少が続くとみられている21年までは設備投資も復活してこないものと予想されます。
プラントエンジニアリング会社のみならず機械、建設、輸送企業など、関連産業にとっても受注を勝ち取るのが難しい状況であり「試練の年」であると言えます
脱炭素化対応への圧力
次に「脱炭素化への対応」について見ていきましょう。
過去5年間、気候変動問題に対する関心の高まりから投資家による石油メジャーに対する再生可能エネルギーへのトランジションを求める動きが活発化しています。
これに対してShellやBPなどの欧州系メジャーは低炭素エネルギーへの投資および脱炭素化に向けた施策を積極的に行うとの声明を出しております
企業価値への影響が無視できな状況になってきており、クリーンエネルギーへの投資が喫緊の課題となっております
石油・天然ガス需要はどうなるのか?
では、炭素排出の根源とされる「石油・天然ガス開発に対する投資」はどうなるのでしょうか?
新型コロナの下りとは相反する話になりますが、ShellやExxonMobilは今後も「天然ガス」がエネルギー供給における重要な役割を果たすとみており、2040年までに年間7億トンまでに増加するLNG需要を満たすための投資が必要であると述べています。
なので、石油メジャーとしては「再生可能エネルギーへのトランジション」を進めつつ「クリーンなガス開発」も並行して行うという複雑な事業遂行が求められている状況です。
プラントエンジニアリング会社としては顧客のクリーンなガス開発に貢献するために、安価かつ低環境負荷のソリューションの提供が求められます
プラントエンジニアリング会社に求められる対応
ここからは、上記の状況を踏まえてプラントエンジニアリング会社はどのように対応していくべきか?について私見を述べたいと思います。
デジタル技術の活用でコスト競争力を強化
顧客の投資への体力は下がってきている状況を踏まえ、今後はより一層「低コスト化」が求められるようになります。
つまりプラントエンジニアリング会社間での競争も激化することになるでしょう。
このような状況で生き残りを図るには、昨今高騰の一途を辿る「建設費」の削減を図るためのイノベーションが求められます。
下記の記事で述べたように、建設フェーズで使用される膨大な量の図面・物品データは上手く活用されているとは言い難く、デジタル技術を活用した建設管理システムの開発は急務と言えます。
この状況を踏まえ、デジタル技術に精通した建設エンジニアの需要はドンドン増加していくものと思われます
顧客の既存設備への脱炭素技術の導入
石油メジャーをはじめとする顧客の多くは「再生可能エネルギーへのシフト」を進めつつある一方で、既存の石油・ガス資産の「低炭素化」を図る動きも進めています。
この動きはプラントエンジニアリング会社としては新たなビジネスチャンスです。
既存資産に対して提供できる低炭素技術(燃費改善など)を磨き、顧客の既存資産に対して操業フェーズにおけるソリューションを提供することも視野にいれるべきでしょう。
新たな事業の柱を
長期目線では、石油・天然ガス産業は「衰退産業」という位置づけに変わりはありません。
今後、顧客サイドで石油・天然ガス関連投資が縮小していくことを考えると、新規事業の創出こそがプラントエンジニアリング会社に求められる喫緊の課題であると言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
プラントエンジニアリング業界を志望している学生の方々にとっては、知りたくない情報ばかりだったかもしれませんが、イチ社員としてはこの状況をあまり悲観しておらず、むしろ「新たな時代を切り開くためのチャンス」と捉えています。
現在、世界各国のプラントエンジニアリング会社が変革のための動きを進めています。
このような変革の時にこそモチベーションが高まるという学生の方は、ぜひプラントエンジニアリング業界のように「エネルギーの安定供給」「社会インフラの提供」など人々の生活に大きく貢献できる産業において、その実力とやる気を発揮して頂ければと思います。
以上、最後まで読んで頂きありがとうございました。