どうも、Tomatsuです。
前回の「社員が徹底解説!プラントエンジニアリング業界とは?」では、本業界の概要のほんの触りだけを説明させて頂きました。
プラントエンジニアリング業界はネットで調べてもほんとに情報が少なく (特に一次情報) 、ベールに包まれた業界であると言えます。
特に各職種についての説明が少ない様に思いましたので、この記事以降は順を追ってエンジニアリング会社の各職種について説明していきたいと思います。
今回はエンジニアリング会社の象徴でもあるプロジェクトマネージャーの仕事内容について取り上げます。
(注)事実情報以外にも一社員としてのオピニオンも含まれている点に留意ください
プラントエンジニアリング業界の仕事内容(プロジェクトマネージャー編)
プロマネ = EPCの責任者
前回の記事では、エンジニアリング会社の仕事はE(Engineering : 設計)・P(Procurement : 調達)・C(Construction : 建設)の順で進められることを紹介しました。
それぞれのフェーズで、設計業務・調達業務・建設業務と、各専門性をもったエンジニアが活躍することになるのですが、彼らはプロジェクトの最初から最後まで参画する訳ではありません。
例えば、最近の大型プロジェクトではプロジェクト期間は大体3~5年くらいになるのですが、設計エンジニアの多くは最初の1~2年でほとんどの業務を完了させ、プロジェクトから卒業します(この卒業のことをデモビ(Demobilization)と言います)。
では、一体だれが最初から最後まで通してプロジェクトの遂行を管理するのでしょうか。
それがプロジェクトマネージャー(略してプロマネ)です。
プロマネを補佐するプロジェクトエンジニアと呼ばれる方々も居るのですが、今回はプロマネに焦点を当てて説明します。
全責任と権限を与えられる
エンジニアリング会社では、プロマネにプロジェクトの全責任を負わすのと同時に、全権限を与えます。
大きなプロジェクトですと社員だけで数百人、社外のパートナーを含めると数千~数万人と関わる人が増えていきますが、プロマネはその頂点に立ち、プロジェクト遂行に必要なヒト・モノ・カネ・情報の全てをマネージします。
プロジェクトは一日でも遅れるとLiquidated Damage(LD)と言って顧客に対して罰金を払わなければなりませんので(高い場合1日あたり1億円とかザラです)、プロマネは迅速かつ正確な意思決定をし、契約上の品質・納期を死守しなければなりません。
非常に胃のきりきりする仕事です。
プロジェクトに関わる専門部員はプロマネほどの情報を持ち合わせていないので、プロマネが言うことは絶対です。
プロマネが白と言えば白。左と言えば左なのです。
プロマネはその一言一言に思い責任を背負い、プロジェクトの方向性を示し、チームメンバーのベクトルがその目標に向かうよう働きかけます。
まるで戦国時代の将軍みたいですね。
あまりにも責任が大きいので、プロジェクトの山場では夜も眠れない日々が続くようです。
ただ、私の尊敬するプロマネも仰っていましたが、プレッシャーが大きい分、プラントが完工した時の喜びは誰よりも大きいようです。
「これは俺が建てたプラントなんだ」と自信を持って言えるとのことで、とにかくやりがいのある仕事だと言っておりました。
プロマネに必要な能力
プロジェクトの成否は、プロマネの技量に掛かっていると言っても過言ではありません。
顧客が契約をひっくり返してきたりと、顧客のレベルに依存する所も大いにあるのですが、顧客マネージメントも含めてプロマネの技量は大いに重要です。
また、プロジェクトではトラブルが付き物で、日々生き物のように状況を変えていきますが、これらに対応するアドリブ力のようなものも求められます。
プロマネが超優秀であればプロジェクトは上手くいきますし、ダメダメであれば失敗します。
ちなみに、優秀なプロマネと言っても、情熱カリスマタイプ、冷静沈着タイプなど色々なタイプがおります。
キングダムでも、本能型の麃公将軍、 知略型の呉慶将軍、バランスタイプの王騎将軍など、いろいろなキャラがおりますよね。これと一緒です。
ただ共通して言えるのは下記の力が半端ないということです。
- EPCの知識(技術・遂行知識)
- 意思決定スピード
- コミュニケーション力(発信力、傾聴力、理解力)
- 精神力
一つ一つみていきましょう。
EPC全体を見通す知識
プロマネはEPC全体を見通すための知識(技術面・遂行面)が必要です。
細かい話ですが、P&IDや配管図面(レイアウト・3Dモデル)が計画通りに発行できているか、プラントの骨格となるパイプラック部材の発注や土木工事は良好に進捗しているか、とにかく鬼のように物量が多い配管据え付けは遅れていないか、など、プロジェクトフェーズの要所要所でリスクが大きい所をしっかり見極める力、トラブルがあったら即潰す力が必要です。
戦国系の例えばかりで恐縮ですが、マンガでも将軍が「ここが戦の山場だ」って言うシーン良くあるじゃないですか。
これと一緒で、プロジェクトにも山場というものがあります。
「○○が遅れたら△△に響くから全経営資源をつぎ込め」、みたいな判断を下すのって、EPC全体を見通す力が無いとできないんですよね。
ちなみに、EPC各フェーズの全てを細かく知る必要はないです。そんな人存在しません。
あくまでプロジェクトの成否に関わる山場を見極めるために必要な全体感を持っている事が重要です。
意思決定スピード
また、プロマネは意思決定が早くなければなりません。
プロジェクトが始まっているということは、納期が時々刻々と迫っているということですので、「時間をかける=お金を消費している」ということです。
プロジェクトでは、トラブルが山のように押し寄せてきますが、それぞれの対処法を全て熟考することはできません。
無論、大きなトラブルの対処法を決定するには情報収集が大事ですが、これ以上情報収集してもロジカルな答えは出てこない、やってみないと分からない、というポイントに差し掛かることもあります。
そのような時には勇気を持って速やかに決断することが重要です。
コミュニケーション力 (発信力、傾聴力、理解力)
プロマネは、コミュニケーション力の塊でなければなりません。
これが、一番重要かもしれません。
プロジェクトの参画人数は大きなプロジェクトですと、社内だけで数百人にも上るので、コミュニケーションを誤ると大混乱が生じます。
プロマネの指示内容は、指示系統を沿って各セクションのマネージャーから末端部員まで発信されますが、内容が末端まで浸透するのに数日かかることもあります。
つまり、情報発信を誤ると、それを訂正するのに、また数日かかるということです。
発信下手では大混乱を招くので、プロマネはコミュニケーションお化けでないとだめです。
また、精度の高い意思決定を行うには、部下からのinputへの理解力、傾聴力も必須です。
あらゆる観点でコミュニケーション力が求められるのですね。
精神力
プロマネには強い精神力が求められます。
プロジェクト遂行中に大きなトラブルに見舞われると、プロジェクトチーム全体に妙な不安感が押し寄せてきます。
そのような時にプロマネがどっしり構えてくれていると、「ああ、我々は大丈夫なんだ」と高い士気を保つことができます。
この力、上手く説明できないのですが、本当に重要なんです。
正直プロマネも胃がキリキリしてしょうがない状況も多々あるかと思いますが、大プロマネと言われる人たちは本当に困難に動じません。
私もいつかはこのような境地に立ってみたいと思っています。
プロマネまでのキャリアパス
これは良く聞かれることなのですが、いろんなタイプがおります。
- プロジェクトエンジニアからのたたき上げタイプ
- 設計部隊で10年キャリアを積んでエンジニアリングマネージャーを経由するタイプ
- 建設からスタートし徐々に上流工程の知識を身につけていくタイプ
など、様々です。
ドラクエで、あるルールに従って転職を繰り返して勇者を目指すみたいな、画一的なルートはないんですね。
入口はどこからスタートしてもプロマネを目指せますが、若いうちから「全体感」を持って仕事に取り組むことが重要と言われます。
上司から与えられている仕事はEPCのどの部分に該当するのか、自分の仕事は上流・下流・水平方向にどのような影響を与えているのか?
こういった全体感を感じながら成長することが求められます。
俺は職人気質だから技術を極める!という人もおりますし、かなり重要ですが、こういう人はプロマネよりもチーフエンジニアを目指すべきです(チーフエンジニアについても別の記事で紹介できればと思っています)。
まとめ
以上のように、プロマネはいわばプロジェクトを統括する会社の社長のような存在です。
技術面、ビジネス面、人間面で成熟している必要がありますし、エンジニアリング会社の社長にプロマネ経験者が多いのも頷けますね。
現在は別のキャリアプランが出来たので今は志しておりませんが、私も就活生の時は将来プロマネになりたくて、この業界を志願しました。
やはりエンジニアリング会社の花形はプロマネですし、誰から見ても大プロマネと呼ばれる人はかっこいいです。
皆様も将来の大プロマネを目指してエンジニアリング会社に入ってみませんか?
以上、最後まで読んで頂きありがとうございました。