どうも、Webマーケター兼中小企業診断士のトーマツです。
診断士のミッションは「経営者の右腕として中小企業経営を成功に導くこと」です。
業務の幅は非常に広く、なかには、支援先企業やその競合のビジネスモデルを精査し、必要に応じて戦略を再構築する役割も含まれます。
それゆえ、普段からあらゆる企業のビジネスモデルを解剖する機会が多いですし、こんな感じで個人ブログにも分析結果を掲載したりしております↓
しかし、ふと立ち止まった時に「中小企業診断士のビジネスモデルってなんだっけ?」と考えることがありました。
大した内容ではありませんが、せっかくですので備忘録的に記事に残したいと思います。
受験生の方々は勉強の箸休めにご活用いただければ幸いです。
- 中小企業診断士を目指している方
- 中小企業診断士になりたての方
- ビジネスモデルを考えるのが好きな方
中小企業診断士のビジネスをビジネスモデルキャンバスで考える
そもそもビジネスモデルとは?
ビジネスモデルは基本的には事業者を主語に、そのビジネスが「誰に(Who)、何を(What)、どうやって(How)、付加価値を提供し収益を上げていくのか?」を示すモデルを指します。
例えば、吉野家であれば以下の通り。
- 誰に:「安価にサクッと腹ごしらえをしたい人」
- 何を:「安くて早くて美味しい食事の提供」
- どうやって:「スケールメリットを利かせた競争力の高い調達網」「効率的な店舗運営に基づく高回転率」、「徹底的な素材へのこだわり」
こうやって表現すると吉野家のありがたさが身に沁みますね。
ビジネスモデルキャンバスで表現する
上記のように「誰に・何を・どのように」を抑えておけば一定の説明は可能ですが、これを9つの要素に拡張したのが「ビジネスモデルキャンバス」です。
ビジネスモデルキャンバスのテンプレート。これを空で言えるようになるとかっこいい。
ビジネスモデルキャンバスは「①有用性(顧客は欲しがるか?)」「②実現性(提供できるか?)」「③収益性(果たして儲かるのか?)」の3つのセクションに大別できます。
①→②→③の順に検討していくのが良い
ビジネスモデルの考え方は自由ですが、基本的には①→②→③の順で検討し、全てがうまくハマれば実践に移り、検証していくのがポイントです。
ちなみに、冷凍宅配サービスを提供する「nosh」のビジネスモデルキャンバスは以下の通りです。
noshのビジネスモデル(筆者調べ)
今回の記事では、ビジネスモデルキャンバスの各項目に沿って診断士のビジネスモデルについて考えてみたいと思います。
もっと詳しくビジネスモデルキャンバスについて知りたい方はこちらをご覧ください。
中小企業診断士のビジネスモデルとは?現役診断士がゆる〜く考える
では、ここから診断士のビジネスモデルを整理していきます。
既に資格取得済みの方はご自身のモデルと照らし合わせて考えていただき、また、これから診断士になられる方(目指している方)はどのようなモデルを作っていきたいのかを考えながら読んでみてくださいね。
統計情報に基づかない私見ゴリゴリの内容になりますので、100%鵜呑みにしないでくださいね。クレームは受け付けません。
1. 顧客セグメント(CS)
まずは顧客セグメントです。
いわゆる「誰を?対象にしたビジネスか?」を考える部分です。
中小企業診断士というからには、大企業を相手にビジネスをしている方は少なく、ほとんどは中小企業・小規模事業者(または個人・フリーランス)向けサービスを展開しているかと思います。
一方、大きな分かれ目となるのが「事業フェーズ」でしょう。
私のように売上アップを標榜している「成長志向の企業」をメインターゲットとしている診断士もいれば、借入金の返済や財務上の問題を有する「経営改善が必要な企業」を対象にしている診断士もいらっしゃいます。
2. 提供価値(VP)
次は提供価値です。
正直、「経営」「財務」「マーケティング」「IT」「法務」「アライアンス」など機能上の話や、業界・サービス形態で分類すると無限に考えられますが、提供価値を突き詰めていくと以下の分類にまとめられるかと思います
[診断士の提供価値]
以下のいずれか(または全て)を通じた経営改善。
- 課題の整理
- 課題解決の実行
- 経営者・社員の教育
例えば、戦略コンサルを名乗る人は、企業の置かれている状況や事業目標を踏まえた戦略立案に関わっている一方、その実行は行わないため、「①経営課題の整理」のみを担っているていると言えます。
一方、「②経営課題解決の実行」のみを担当する人の場合、課題は見えていたあとはその実行を行う立場となります。コンサルタントというよりはソリューションプロバイダのように感じますが、この手の診断士も多数います。
また、セミナー講師を通じて「③経営者・社員の教育」のみにフォーカスする診断士もいますね。
私の場合は、伴走支援型コンサルタントを自負しており、①〜③まで一気通貫に担っているイメージです。
これに加えて以下のような専門性に応じて分類するのが一般的ですが、ここでは割愛したいと思います。
- 財務戦略支援(資金調達)
- 事業承継・M&A支援(経営の持続化)
- マーケティング支援(売上アップ)
- 業務効率化・デジタル化支援(コストカット)
など
3. チャネル(CH)
経営に課題を感じている企業は世の中ごまんといらっしゃいますし、巡り会う方法は多種多様です。
しかし、多くの診断士(特に資格取得年がまだ若い方)は以下のいずれかのチャネルを有効活用しております。
- 診断士協会
- 商工会・商工会議所・よろず支援拠点など
- 診断士同士のつながり
- 知人・友人(過去の勤務先含む)
この辺りがあまりにも属人的であるが故に診断士の活動の実態が見えないというお悩みがありますが、言い換えると、ここが診断士としての色を出す部分なのかもしれません。
なかにはデジタルマーケティングの仕組みをうまく使って、インバウンドで顧客開拓をおこなっている人もいらっしゃいますがごく稀です。
4. 顧客との関係(CR)
顧客との関係も多種多様ですが、大きく分けて以下の二つに大別されます。
- 顧問契約を通じた継続的な関係
- プロジェクト型業務を通じた短期的な関係
伴走支援型を標榜する診断士はより①に近づき、補助金申請支援のような強烈な単発プロジェクトをメインに扱う診断士は②に近づくイメージであり、提供価値の形態に依存していると言えます。
①の場合、特定の企業の深い経営課題に携わることができますし、②の場合はより多くの企業に触れることができ経験の幅が広がります。
5. 収益の流れ(RS)
収益の流れはいわゆる企業との直接契約である「民民契約か?」、または国・都道府県や商工会議所などの公的機関が絡む窓口業務や経営改善事業(405事業など)のような「官民契約か?」によって異なります。
民民の場合、対価の算定方法は自由であり、支援メニューの価値に応じて月額〇〇円のように月額制で支払われることもありますし、支援先の成果が出たタイミングで成果報酬として対価をもらう方式もあります。
完全に自由です。
一方、官民の場合は、公的機関側が設定した報酬を変更することは不可能であり、案件を受ける前に見合っているかどうかの検討が必要です。
6. 主要な資源(KR)
重要な資源は価値提供手段による部分もありますが、診断士の基本業務が「コンサルティング」であるとすると、それを裏付ける「コンサルティング力」になります。
コンサルティング力を「持続的に価値の高いコンサルティングを実施する力」と定義するとその要素は「ノウハウ」「経験」「メタ認知力」「論理的思考力」「仮説思考力」「プレゼン力」「メンタルタフネス」「フィジカルタフネス」などに分けられますが、ここでは詳細は割愛します。。。
また、1人で支援を続けるのか、組織的に支援をしていくのかにもよりますが、後者の場合は、コンサルティングチームも重要な資源に位置付けられます。
7. 主要な活動(KA)
主要な活動はコンサルティング力を高いレベルで維持するための以下の活動が挙げられます。
- 実務の振り返りによるノウハウ体系化
- 勉強会・研究会の参加による知識のアップデート
- 読書・情報収集による知識のアップデート
- プレゼン力向上
など
また、顧客との関係性が継続しないプロジェクト型を志向する診断士の場合は、営業・マーケティング活動を通じた新規顧客の開拓が必須になります。
8. 主要パートナー(KP)
価値提供の手段にもよるところが大きいです。
組織的な取り組みを診断士の場合、他士業を主要パートナーとし、お互いの得意分野を交換し合うことで支援先により質の高いコンサルティングを提供している人たちも多いです。
また、補助金申請支援において、経験年数の高い診断士が元請けとなり、経験年次の浅い下請け診断士をパートナーとして事業計画書作成等のライティング業務を発注スタイルが取られることも多いです。
なお、言わずもがなですが、公的業務を主戦場とする診断士の場合、商工会議所等の公的機関が主要なパートナーとなります。
9. コスト構造(CS)
最後はコスト構造です。
診断士活動は製造業のように原料・部品等の仕入れや加工、設備投資等の重たい出費はありません。
かかったとしてもホームページ制作費などの軽い初期コスト、知識のアップデートのための書籍・セミナー代、パートナー等への外注費、サーバー代などの軽いランニングコストのみです。
筆者(トーマツ)の場合
ちなみに私のデジタルマーケティング顧問サービスの場合は上図の通りです。
一つずつ説明します。
1. 顧客セグメント(CS)
- 売上アップ・成長志向の社員数30名以下の経営者
提案している価値を踏まえると、支援先にリソースの確保を求めざるを得ず、ある程度成長志向の企業が限定となります。
また、年齢は問いませんが、社長ご自身の成長意欲がある支援先との仕事が楽しいので、このような括りにしております。
2. 提供価値(VP)
- マーケティング戦略立案実行に基づく売上向上
- 経営上の悩みの捌け口提供によるストレス軽減
- 安心感の提供
機能としての提供価値はデジタルマーケティングを通した売上向上ですが、支援先企業の方々からは「トーマツさんがいてくれると安心する」と言われております。
「誰か信頼している人に経営をサポートしてもらっているという安心感」を提供している自負があるのでこのような括りにしています。
3. チャネル(CH)
- リファラル(診断士)
- ブログ
- SNS
仕事の獲得方法は診断士仲間からのリファラルが半分と、ブログ・SNSからの獲得がもう半分のイメージです。
集客を意図しているわけではないのですが、素で発信している様子がかえって好作用しているイメージです。
中堅企業・大企業向けサービスに展開するにはしっかりした基盤を築く必要はありますが、その予定はありません。
4. 顧客との関係(CR)
- 顧問契約に基づく継続的な関係
ここは至って普通です
5. 収益の流れ(RS)
- コンサルティング・実行支援を通じた報酬
ここも至って普通です
6. 主要な資源(KR)
- コンサルティング力
- コンサルティングチーム
- ライティングチーム
自身の提供価値の源泉は、デジタルマーケティングの実践に基づくノウハウ+顧客やステークホルダーを巻き込むプレゼン力であると分析しております。これらを丸っとしてコンサルティング力と表現してます。
また、主催している研究会メンバーで構成されているコンサルチーム、当ブログも支えてくれているライティングチームも重要な資源です。
7. 主要な活動(KA)
- 中小企業デジタルマーケティングのノウハウ体系化
コンサルティング力の源泉となる活動です
8. 主要パートナー(KP)
- DML(研究会メンバー)
- コンサルティングチームメンバー
- ライティングチームメンバー
- デザイナー
ここは主要な資源と被ります
9. コスト構造(CS)
- 研究会運営費
- 書籍・セミナー参加費
- パートナーへの外注費
大きなコストはかけてませんが、知識の獲得にお金をしっかりかけております。
まとめ
以上、本記事では「中小企業診断士のビジネスモデル」について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
もし本記事の内容でご質問ある方は是非コメント欄に書き込んで頂けると幸いです。
お答えできる範囲で答えさせて頂きます。
それではまた!