どうも、Tomatsuです。
早速ですが皆さまは「ビジネスモデルキャンバス」をご存知でしょうか?
ビジネスモデルを表現する手段として、スタートアップ企業や大企業の新規事業部門にお勤めの方々などを中心にここ数年で劇的に広まってきました。
一方で、
- どうやって書いたら良いのか分からない
- 書いたのは良いもののどうやって使ったら良いのか分からない
といった声も良く耳にしますので、まだまだ世のビジネスマンに活用しきられていないのが現状です。
そこで、本記事では経営コンサルタントの視点から「ビジネスモデルキャンバスの書き方&使い方について」解説したいと思います。
記事の前半では「ビジネスモデルキャンバスとは?」を解説しつつ、後半では「書き方&使い方&メリット」について具体的に解説します。
この記事を読み終わるころには、実際に「ビジネスモデルキャンバスを活用できる状態」になると思いますので、最後まで読んで頂ければ幸いです。
- 新規事業を考えている人
- 起業のアイデアを考えている人
- ビジネスモデルキャンバスの書き方や使い方を知りたい人
ビジネスモデルキャンバスとは?
ビジネスモデルの定義
そもそも「ビジネスモデル」とは何なのでしょうか?
色々な定義がありますが、ここでは
「誰にどのような価値を提供し、どうやって儲けるか?」
を論理的に記述した設計図
とします。
これは本記事の本題である「ビジネスモデルキャンバス」の生みの親であるA.Osterwalder(オスターワルダー)氏とY. Pigneur(ピニュール)氏による定義でもあります。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルは、上記の定義を満たしているものであれば、どんな形で表現されていてもOKです。
一方で、重要になる要素を「モレなく、ダブりなく(MECE)」表現するにはフレームワークの活用が大事になります。
これまで「SWOT分析・3C分析・アンゾフの成長マトリックス・5フォース分析」など、多くの学者・実業家によって実用的なフレームワークが起案されてきましたが、ビジネスモデルを一目で網羅的に表現できるものはありませんでした。
そこで近年、A. Osterwalder氏、Y. Pigneur氏によって発案されたのが「ビジネスモデルキャンバス」です。
ビジネスモデルキャンバスの構造
ビジネスモデルキャンバスは以下の通り、9つの項目に分かれております。
- 顧客セグメント
対象となる顧客層 - 価値提案
顧客に提供する価値 - チャネル
顧客に価値を提供する手段 - 顧客との関係
顧客との接点や関係性 - 主要活動
事業における主要な活動 - リソース
事業を運営する上で強みとなる経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報) - パートナー
事業を運営する上で連携するパートナー - 収益の流れ
顧客の支払いや課金の方法 - コスト構造
事業を運営する上で必要となるコスト
9つも項目があって複雑に感じるかもしれませんが、シンプルに考えれば以下の3つの要素に集約することができます。
- 有用性(顧客は欲しがるか?)
- 実現性(提供できるか?)
- 収益性(果たして儲かるのか?)
まさに「誰にどのような価値を提供し、どうやって儲けるか?」が網羅されてますね。
このフレームワークを使えば、初心者の人でもビジネスモデルに必要な要素を網羅的かつ視覚的に表現することができます。
ビジネスモデルキャンバスの書き方
では、ここからビジネスモデルキャンバスの具体的な書き方を見ていきましょう。
もしあなたが新規事業を考える立場の人でしたら、ぜひ一緒にビジネスモデルキャンバスを作りながら読み進めて下さい。
Step①:「誰に・何を・どのように」から埋める
ビジネスモデルキャンバスには特に決まった書き方は無いのですが、個人的におススメなのが「誰に・何を・どのように」という要素、すなわち「有用性要素」から埋めることです。
「本当にこのソリューションを実現できるのだろうか?」や「採算は取れるのか?」などの縛りは設けず、自由な発想で考えてみましょう。
①顧客セグメント
まずは「どのような顧客を対象に価値を提供したいのか?」を考えます。対象顧客層は具体的であればあるほど良いです。まずは以下の切り口で細分化してみましょう。
- 法人客か個人客か?
- デモグラフィック(人口統計学的属性)
性別、年齢、職業、学歴、所得など - ジオグラフィック(地理学的属性)
地域、人口密度、都市化(都市・過疎)など - サイコグラフィック(心理学的属性)
趣味趣向、価値観、購買同期など
②価値提案
次に「顧客にどのような価値を提案したいのか?」を考えます。価値提案の項目を埋める上で重要なのが「見たまんまのサービス・製品をそのまま記載しないこと」です。
例えば、吉野家は牛丼を提供しておりますが、吉野家の価値は牛丼を提供していることではなく「早い、うまい、安い、食事体験の提供」です。他で言うと下記の例が挙げられます。
- スターバックス
リラックスできる第3の場所(Third Place)の提供 - コンビニ
必要なときに必要なモノが何時でも買える
提供価値は極力「顧客課題・ニーズ起点」で考えるようにしましょう。
③チャネル
次に「顧客に価値を提供するためのチャネル」を考えます。いくら革新的なビジネスプランが思いついても顧客に提供できなければ無意味です。例えば、最強に品ぞろえの豊富なコンビニを作ったとしても無人島で運営していたら意味ないですよね。
店舗型で都市部中心に展開していくのか、ネット販売型とするのか、また認知度を獲得するためにどのような広告を打っていくのか?を考えましょう。
④顧客との関係
次に「顧客との関係性」を考えます。この項目はイメージしづらいかもしれませんが、普段、あなたが使用しているサービスを思い浮かべると考えやすいと思います。例えば、あなたが顧客だとすると、コンビニとあなたの関係は「セルフサービス、売り切り型」となります。一方、Netflixの場合は「自動サービス、継続型」となります。
便宜上、「①顧客セグメント」を決めてから「②価値提案」を決めるという順番にしておりますが、どちらかと言うと①と②は同時に決めるイメージで進めてみて下さい。
Step②:実行体制(組織・マネジメント)を埋める
次に「ビジネスの実行体制(組織・マネジメント)」を埋めていきます。
Step①で起案したビジネスプランを「実現させるために何が必要か?」を表す項目となります。
⑤主要活動
まずは価値を提供するために必要となる「主要な活動」を埋めます。
この項目は次の2つの観点で考えると良いでしょう。
- 価値の創出、顧客関係、チャネル構築に必要となる活動は?
- リソースの強化やパートナリングに必要となる活動は?
⑥リソース
次に価値提供に必要となる「リソース」を考えます。
一般的に経営資源と言われる「ヒト・モノ・カネ・情報」を記載すれば良いのですが、価値提供に必須となる重要な要素のみピックアップすると良いでしょう。
⑦パートナー
現代において自社単独で完結させられるビジネスはほとんどありません。
⑥で挙げたリソースのみでは価値提供に不十分な場合は必要となるパートナーを考えてみましょう。
Step③:収益性要素を埋める
最後に、これまで起案したビジネスプランが「儲かるのか?」を考える上で必須となる「収益性要素」を埋めます。
⑧収益の流れ
顧客への提供価値に対する「報酬をいくら、どのように頂戴するか?」を考えます。
サービス・製品の種類によって親和性が異なりますが、まずは以下を切り口に考えると良いでしょう。
- プライシング(コスト志向型、需要志向型、など)
- 価値の源泉(物販、利用料、ライセンス、会費)
- 単発か継続か?
⑨コスト構造
最後に価値提供に伴う「コスト」について考えます。
- 製造原価
- 広告宣伝費
- 研究開発費
などのあらゆるフェーズにおけるコストを考えなければなりません。
9項目全て埋められたらひとまずビジネスモデルキャンバスのたたき台が完成です。
これはあくまでも「たたき台」ですので、全体を俯瞰しながら少しずつブラッシュアップしていきましょう。
ビジネスモデルキャンバスの例
ではここで一旦、ビジネスモデルキャンバスの例を見てみましょう。
ここでは超便利な配車サービスとして隆盛を極めたUberについて取り上げます。
Uberのビジネスモデルキャンバス
Uberはドライバーと乗客を繋ぐ配車サービスを提供している会社です。
車を保有していない人向けに「輸送サービスを提供している」という点ではタクシーと同じですが、アプリを使った効率的な配車が可能ですので「待ち時間が少ないこと」や「価格が安い」などの特徴があります。
また、ユーザー側からしたら地味に「ドライバーの方に行先を伝えなくてもよいこと」「ドライバーの評価が事前に分かって安心」などの利点がありますね。
タクシーとほとんど同じ「顧客セグメント」を掲げているにも関わらず他の要素は全く異なることが分かりますね。
ビジネスモデルキャンバスを使うメリット
最後にビジネスモデルキャンバスを活用することのメリットについて解説します。
ビジネスモデルに必要な要素を網羅している
繰り返しになりますが、ビジネスモデルキャンバスは、ビジネス全体の主要な要素を網羅しています。
このフレームワークを使えば、新規事業を考えたことが無い人でも「モレなくダブりなく」ビジネスモデルの必要要素を抽出することが出来ます。
また、このフレームワークを使っていれば他者(競合など)のビジネスモデルを分析する上で、必要な切り口などが自然と身につきますので、ビジネスマンとしてのレベルアップにも通じます。
他人への説明に便利
あなたが大企業の新規事業担当者であれば経営陣に対して、スタートアップ企業の創業者であれば投資家に対して、事業の肝となるポイントを説明する機会がありますよね。
ビジネスモデルキャンバスは一目でビジネスの重要要素が分かりますので、上記のような状況において、他人に事業の肝を共有する際の強力なツールとなります。
ピボティングに最適
ビジネスモデルキャンバスは一度出来上がったら完成する訳ではありません。
ビジネスモデルの解像度を高めていく上で、9つの項目のうち、幾つかの要素を修正せざるを得ない状況が必ず生じます。
このようにビジネスモデルの要素を修正することを「ピボティング」というのですが、ビジネスモデルキャンバスは一目で「ピボティングの履歴管理」にとても使いやすいのです。
理由は簡単で「ビジネスモデルを一目で俯瞰できるから」です。
キャンバス自体を写真に収めるなり、何かしらのファイル形式で保存しておくことで、新規事業のこれまでの変遷を一目で把握することができます。
履歴管理が出来ていれば、これまで検討してきたビジネスモデルを再検討してしまうなどの「ダブルワークの発生」を防止することができますので、新規事業創出を効率化することができます。
Twitterはピボティングを何度も繰り返したことで、ビジネスモデルキャンバスのほぼ全要素が原型を保っていないほどになったとか。。。
まとめ
以上、本記事では「ビジネスモデルキャンバスとは?」について解説させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか?
今後、本ブログで様々な企業のビジネスモデルキャンバスの例を紹介していく予定ですので、楽しみにしていただければと思います。
それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました