どうも、Tomatsuです。
分配可能額と準備金の積立額のルールが細かすぎていまいち覚えられません。。。
どうすれば良いでしょうか?
本記事ではこのような疑問にお答えします。
分配可能額と準備金の積立てについて理解する
分配可能額と準備金の積立額について分かりやすく解説
企業は、事業で蓄積した利益の一部を配当金として株主に分配できます。
ただし、むやみやたらに利益を分配してしまうと会社は財源を失い、債権者(金融機関など)が支払いを受け取ることが出来なくなってしまう可能性があります。
このように株主と債権者は利益相反の関係にありますが、会社法では双方のメリットを考え「分配可能額」ならびに「準備金の積立て」という概念を規定しております(会社法第461条、第445条)。
① 分配可能額
株主に対して還元可能な配当額を制限するもの
② 準備金の積立て
債権者保護のために、会社に対して積み立てを命じるもの
これでは債権者有利じゃない?と思うかもしれませんが、経営法務で学習した通り、株主は「有限責任」の盾に守られており、例えば会社が倒産したとしても債務に対する責任を負いません。
これでは債権者があまりにも不利ですよね。
会社法は、このアンバランスを解消するために債権者が少しでも有利になるような例外規定を加えていったものと捉えて頂ければ分かりやすいと思います。
ではここからは「分配可能額」と「準備金の積立額」の規定について一つずつみていきましょう。
分配可能額とは
分配可能額の求め方
分配可能額は「利益剰余金」と「その他資本剰余金」から「自己株式」を控除した額を指します。
よくある質問
試験対策としては上記の式さえ知っていればOKですが、理屈が分からないと暗記が捗りませんよね?
よくある質問に対する答えを用意しましたので、理屈の理解に役立てて頂ければと思います。
なぜ資本準備金と利益準備金を含めないのか?
【答え】
準備金はそもそも債権者保護のために積み立てたものです。
それを配当してしまっては意味がないので準備金は含めません。
迷ったら分配可能額設置の目的を思い出してみましょう。
なぜ自己株式を控除するのか?
【答え】
「会社による自己株式の取得 = 株主への払い戻し」と捉えられます。
払い戻しが完了しているものなので、分配可能額からは控除しましょう、という考え方です。
準備金の積立額
次に準備金の積立てについて整理していきましょう。
会社法第445条第4項では下記のとおり規定されています。
会社が剰余金を財源に配当行う場合には、配当時の「資本準備金」と「利益準備金」の合計額が「資本金」の1/4に達するまで、配当額の1/10を「資本準備金」または「利益準備金」に積み立てる必要がある。
文字にするとややこしいですが、ルールは至ってシンプルです。
下記のステップで考えましょう。
ステップ①:そもそも積み立てる必要があるか?を判断
ステップ②:積立額を求める
ステップ①:そもそも積み立てる必要があるか?を判断
まずは積み立てが必要か否か?を判断します。
下記のように、資本準備金と利益準備金の合計が資本金の1/4を超えている場合は積み立て不要です。
ただし、これでは問題にはならないので、試験では下記のケースが出てくるかと思います。
このように資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の1/4に満たない場合は積み立てが必要になります。
ステップ②:積立額を求める
積立額を求めるには、下記の情報が必要になります。
- 不足額
「資本金の1/4」-「資本準備金と利益準備金の合計」 - 配当額の1/10
不足額と配当額の1/10を比較して、いずれかの少ない方が積立額となります。
【配当額の1/10の方が少ない場合】
【不足額の方が少ない場合】
配当の原資によって積立て先が異なるので注意しましょう!
【積立先】
- その他資本剰余金 → 資本準備金
- その他利益剰余金 → 利益準備金
例題
例題としてH27 第4問を解いてみましょう。
【財務・会計】H27 第4問
株主総会の決議より、その他資本剰余金を取り崩して600,000円配当することにした。なお、資本金は4,000,000円、準備金の合計は950,000円である。このとき積み立てるべき準備金の種類と金額の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ
【準備金の種類】
資料より求められるA社の自己資本利益率として最も適切なものはどれか。
(a) 資本準備金
(b) 利益準備金
【金額】
(c) 50,000円
(d) 60,000円
【解答群】
(ア)a と c
(イ)a と d
(ウ)b と c
(エ)b と d
【解答】
まずは資本金の1/4を計算し不足額を計算しましょう。
上図から不足額は50,000円であることが分かります。
次に配当額の1/10を計算し、不足額と比べてどちらが少ないかを判断します。
不足額の方が少ないため、積立額は50,000円であることが分かります。
問題文には配当の原資が「その他資本剰余金」であると明記されているので、積立先は「資本準備金」となります。
よって、答えは (ア)となります。
まとめ
本記事では分配可能額・準備金の積立額について解説しました。
ちょっと長くなってしまいましたがいかがでしたでしょうか?
分かりにくい点、ご質問等などございましたらコメント欄にコメント頂けますと幸いです。
なお、本記事の内容が全てわかったという方は迷わず過去問にチャレンジしましょう。
やはり実践に勝る勉強法はありません!
それでは、最後まで読んで頂き有難うございました。